2005年 03月 04日
こんな「おかあさん」を したかった

現在16歳になった長女が生まれた頃、私たち夫婦は東京で共働きをしていました。

実家の親は働いていて忙しく、「里帰り出産」なんて思いもよらないことでした。東京には頼れる親も兄弟もいませんでしたから、本当に2人だけで赤ん坊を家族に迎え入れたことになります。
産院からアパートに戻った日から産休明けまで、オムツとオッパイと寝かしつける合間に家事を
するという「おかあさん」業。まだ22歳の、子どもみたいな「おかあさん」でした。

正社員だったので、産後8週の産休が明けてすぐ職場に復帰しました。
ほとんどの民間会社にはまだ育児休業という制度がなく、産休が6週から8週に伸びて間もなかった時代です。
毎朝、赤ん坊をオンブヒモで体にくくりつけて自転車をとばし、保育園に預けてからラッシュの電車に飛び乗って会社に向かいました。夕方7時ごろに会社から猛スピードでお迎えに行き、閉店間際のスーパーでとりあえず何か買って、帰宅して、夕食を作って家事をやってお風呂に入れて寝かしつけて。毎日がとても慌ただしかった。

母乳で育てていたのですが、職場復帰したあとも出続けるオッパイの処理をどうするかが大変でした。会社で絞って冷凍保存したり、それが出来ないときは捨ててしまったり。
お迎えの時間があるので、以前のような残業は難しい。つまり勤務時間内にどれほど緻密な仕事をするかが問われているわけで、今思い出しても本当によく働いたと自分を誉めてやりたい気持になります。小さな部署で小さな責任ではありましたが、私に任された仕事を十分にやっていたと思います。

長女は比較的丈夫な赤ん坊でしたが、それでも熱を出したり吐いたりと人並みの病気にはかかりました。そのたびに上司同僚に頭を下げて早退するのは、実に心苦しいものがありました。
後に、わずかな育児時間が貰えることになりましたが、周囲はそれを「権利」というよりも「恩恵」のように捉える時代でした。誰よりも頑張ってきちんと仕事の責任を果たして来たのに、30分早く帰ることがまるで「悪いこと」みたいに見られる。
夫の賃金では食べていけないことは分かっていたのですが、様々な葛藤の末、どうしようもなくなって退職しました。

あの時、育児休業制度が権利として確立されていて、育休から復帰した時にポストと机がある職場環境だったら、私は辞めなかったと思います。
1年、3年という長期のスパンで育児休業や育児時間が与えられ、職場復帰ができたらなあ。
母乳育児をして、また職場に戻りたい。みんなそう願っています。
現実には、堂々と育休を取れる企業はまだ少数です。出産・育児で一度職場を離れても同じ場所に戻れるのは、ごく一部の企業を除けば、公務員くらいではないでしょうか。

仮に1年の育休があったら、私は会社のトイレでオッパイを絞って捨てることもなかったろうし、冬の夜道を赤ん坊と大荷物を抱えて走る心細さも味あわずに済んだと思います。時間に追われず赤ん坊の成長に一喜一憂する喜びを得られただろうし、赤ん坊が病気になった時には純粋に病気のことだけを心配してあげられたことだろう。
あの頃は、長女が病気になると「一体何日会社を休まなくてはいけないか、その間の仕事をどうするか」で頭がいっぱいになり、とにかく早く保育園に預けられる所まで回復して欲しいと念じたものでした。


出産・育児は、女性の人生での最も大きなイベントです。
これを大切にしたいと思わない女性はいません。我が子の健やかな育ちを望まない母親はいません。
事情さえ許せば、乳児の間は手元において愛情を注いで育てたいのが当然だと思います。
それが理想だと強く思います。長女を育てる時、私はそんな「おかあさん」をしたかった。

しかし働く母親は、それぞれ個人の必然・必要があって働いています。
私たちは、学校で学び職場で鍛えられた仕事(職業)を通じて賃金を得、社会に貢献し、自己実現・人間的成長をはかるのが「社会人」であると教えられて来ました。

安心して子どもを産み健やかに育てることと働くことが矛盾なくできる社会こそが理想です。
しかし残念ながら、まだまだ日本の社会(企業)はそういう理想から遠い。そこをフォローするのが、地域と行政の仕事なのではないかと考えます。
乳児を預けて働きに出る母親の切なさ、忙しさ、綱渡りのように緊張する日々を思い出すと、育児休業を取れない職場にいる多くの母親たちに「みんなで手助けするよ!」と言ってあげることこそが求められているのだと思います。


今や、女性の雇用は私が勤めていた頃よりも更に流動化しています。
派遣社員という制度が広がりました。派遣の人たちには、産休も育休もありません。働かなくては食べていけないのに、子どもを生むことが失業に直結するのです。
夫たちの雇用環境もまた、妻が専業主婦の座にすわっていられないほど不安定になりました。いつリストラの対象になるか分からない、ローンを抱えているのに賃金は下がって行く、子どもが育つにつれて教育費は膨らむ。そういう厳しい状況に置かれている人は少なくありません。

フリーターと正社員では、生涯賃金に1億円以上の差が出るそうです。出産によって正社員を辞め、育児が一段落してパートタイム労働をするというのが日本の多くの女性の「M字型就労形態」ですが、生涯賃金という面からはフリーターと極めて似ています。

繰り返しますが、安心して子どもを産み育てることと働くことが矛盾なくできる社会こそが理想です。乳幼児を手元で育てられるような社会になってほしい。
育児休業制度の更なる普及と復帰後のポストの保障を求めて行くと同時に、これが全事業所に行き渡るまでは、行政の「子育て支援」が非常に重要だと思います。
[PR]

by ootani-kazuko | 2005-03-04 18:52 | 考えたこと


<< 3月議会一般質問 1 「児童館...      傍聴に来てくださってありがとう... >>